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2004.09.29

森村桂氏を偲ぶ

F.サガンが生涯を終えたというニュースがあってその数日後にタイトルの訃報を聞いた。

私は本を読むのが苦手だった。子供の頃は読んでもらったという経験があるが、あの読書感想文が嫌で徐々に読書離れをしはじめ、中学生の時は全くいって読まなかった。鉄道ファン、鉄道ジャーナルや廣済堂の「鉄道パズル」など実用本ばかりで俗に言う「文芸」というものには全く縁がなかった。

しかし不思議なもので高校時代にあまりに幼稚な文体で自己嫌悪に陥り、急遽本を読まなければという衝動にかられた。しかし長年読んでいない、いやまだ読んだことのない文芸作品に対して私はどう向き合ってよいのかさえわからなかった。もちろん今日現在もわかっていない。

従って好き嫌いの前に興味が持てるか否かの選択肢しかなく、当時派手な宣伝の映画「角川映画」に影響されて片岡義男や大藪春彦などの作品を読んでいた。そしてその流れから来たのが森村桂だった。

実は女流作家で読んだ経験があるのは森村と曽野綾子の2人だけで他はない。そんな中、森村桂は数冊買って読んだのである。お菓子が好きだったせいもあった。

その後もミーハー的な考えは捨てることができず深田祐介や小林信彦など全部TVになった作品ばかりを読んでいた。

縁あって出版社に就職することができた。先輩、同僚の読書量はさすが出版社、桁違いであった。私はもう恥ずかしくてしかたがなかった。数少ない経験で森村桂を読んだと話したら「その話は言うな」と。

世話になった部長が元夫だったのである。ここに書かれている探検家の谷口正彦が私の上司だった。

その筋には全く縁がなかったのでそれほどまでに偉大な方であったというのを知らなかった。仕事は丁寧で天才的な勘のさえた人間だった。もう離れて10年以上経っているがお元気であるのだろうか?

訃報を聞いてふとそんなことを思い出したのである。

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